新型コロナ感染症の今後

これから新型コロナをどうやって乗り越えるの?

これまでも人類はさまざまな病原体と共存し飼い慣らすことで、健康を保ち発展してきました。天然痘のように、死病として恐れられた感染症が、ワクチンで予防できるようになり世界中で根絶できた成功例の積み重ねがあります。

新型コロナワクチンの開発は非常な速さで進んでいますが、実用化には、発症予防の効果と、重症になりがちな人での副作用を調べる必要があります。ワクチン開発の専門家によると、よく効いて安全なワクチンを得るためには、限られた人々に接種したあと、数年間かけて効果や健康状態を観察し、とくに重い副作用が出ないことを確認してから承認して多くの人々に接種するのが普通です。しかし新型コロナについては、世界中で感染者や死者があまりに多く、社会活動を保ちながらでは収拾の目処が立たないために、特例として、長期の副作用を調べずにロシア・イギリス・アメリカなどで承認されました。しかも、これまでヒトでは承認されたことがないタイプのワクチンの接種が欧米では始まりました。背に腹は変えられない状況での苦渋の選択です。日本でも2月頃に承認される可能性があります。

どんなワクチンにも「感染しなくする」効果はありません。感染はしても発症しにくくなり、発症しても軽症ですむ効果をワクチンに期待します。ですから、ワクチンを打っても、自分が感染者である場合には他人にうつす可能性があるので、マスクをつけて3密を避ける生活様式をこれからも続ける必要があります。ワクチンさえ打てばコロナ以前のように無防備にしてよい「免疫パスポート」なのかと誤解しないよう注意しましょう。

新型コロナをやっつける治療薬はまだありませんが、エイズやエボラなど他のウイルス感染症に使われる薬や強い点滴ステロイド薬など、効果があるものもわかってきています。どの薬も副作用が強く、命に関わるような重症の場合に使われることが多いです。また、軽症の方が重症にならずにすむような新しい薬も世界中で開発が日々進んでおり、中でも、「モノクローナル抗体」には大きな期待が持たれています。このような治療薬のおかげで、もしかかっても重症にならずにすむのなら、新型コロナは将来、怖い病気ではなくなるのです。

「免疫を上げる」食べ物やサプリ、薬はあるの?

免疫は複雑な機構で、免疫を上げれば健康というものではありません。言わば軍隊のようなもので、敵(病原体)が体内に入った時だけに、素早く、ちょうどいい程度に発動されて、鎮静化すれば引き上げることが適切です。ところが、例えば、敵ではないはずの花粉に反応したり(花粉症)、自分の身体の正常な組織を敵とみなしたり(自己免疫疾患)、といったように、適切でない場合に免疫が動員されるとつらい症状が出てしまいます。免疫を「上げておく」ことは、もし可能だとしても、必ずしも得策ではありません。また、食べ物やサプリ・薬剤には「免疫を上げる」ことが現時点で科学的に証明されているものはないようです。不安にかこつけて効能を謳う商法には気を付けましょう。

その一方で、適切なときに適切に免疫が働くようサポートするものが、今後はわかってくるかもしれず、いま手に入るものにもあるのかもしれません。それがわかるまでは、「免疫が適切に働くことを妨げない」ための工夫をすることが実際的です。睡眠や栄養をしっかり取ることを怠ると、免疫機能がうまく働かないことが以前から報告されています。また、水分をこまめにとり喉の粘膜を潤すなど、病原体の侵入を防ぐ工夫とも併せて行うと、感染症の予防にはさらに効果的です。