乳がん検診の「要精密検査」という結果は、必ずしも乳がんを指摘するものではありません。 マンモグラフィ検査や乳腺超音波検査でみつかった病変が、どのような状態か、治療が必要な状態なのかを診断するためのくわしい検査をおこないます。
精密検査には4種類あり1・2の検査はイーク丸の内の乳腺外科で行うことが可能です。3・4の検査の場合は検査可能な施設に御紹介致します。
乳がん検診はマンモグラフィー、超音波検査(エコー)を単独あるいは組み合わせて行います。マンモグラフィーや超音波検査では、乳房の内部を詳細に調べ、異常な組織や腫瘍を見つけることが可能です。年齢やリスクに応じて、適切な検診方法を選択し、定期的に検診を受けることを推奨します。
マンモグラフィ検査の結果票には通常「カテゴリー分類」の記載があります。この「カテゴリー分類」は、どの程度乳がんの可能性を疑うかを表します。
カテゴリー1 | 異常なし | 乳がんを疑う所見はなし |
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カテゴリー2 | 良性病変のみ | 乳がんを疑う所見はなし |
カテゴリー3 | 乳がんを否定できず | がんの確率:5-10% |
カテゴリー4 | 乳がんの疑いあり | がんの確率:30-50% |
カテゴリー5 | マンモグラフィ上は乳がん | がんの確率:ほぼ100% |
参考:患者さんのための乳がん診療ガイドライン2014年版
乳がん検診をうけられた方は「石灰化」という言葉を耳にされることがあるでしょう。石灰化自体は、乳がんではありません。石灰化には良性と悪性があります。検診では、がんの可能性がある乳房内の「石灰化」を探します。
良性の石灰化は母乳が通る管(乳管)沿いや、母乳を作る腺葉の分泌液に生じた沈殿物によって形成されます。また、のう胞や繊維線種の中にできることがあります。
がん細胞が増殖していく過程で、産出する分泌物やがんの壊死に伴って石灰化が生じることがあります。石灰化の検出にあたり最も代表的な検査装置がマンモグラフィで、左右の乳房を2方向ずつ、合計4枚の撮影が理想とされています。
※マンモグラフィ検診で「石灰化」という所見だけが指摘されて、超音波検査でも病変がはっきりしない場合等にはステレオガイド下マンモトーム生検(吸引式乳房組織生検)が診断に有効です。この検査が適応の場合には、検査可能な施設に御紹介致します。
腫瘤が明らかではないが正常の乳腺構築がゆがんでいるものをいいます。同一部位の手術を受けられた方では術後の変化としてこのような所見を認めることがあります。良性の場合もありますが、がんを疑う所見となることもあるので精密検査が必要です。
局所的非対称性陰影(FAD)とはマンモグラフィ検査で左右比べた時に部分的に非対称に見られる所見です。マンモグラフィだけを受けて「局所的非対称性陰影(FAD)」と指摘された方は、実際にしこりがあるのか、あたかもしこりがあるように見える場合なのかを、超音波検査、もしくはマンモグラフィ検査をもう一度撮り判断することがあります。
乳房は、出産時に乳汁を分泌する役割をもつ皮膚の付属器官です。その中には「乳腺」と呼ばれる腺組織と脂肪組織、血管、神経などが存在します。
乳腺組織は、15~20の「腺葉」に分かれ、さらに各腺葉は多数の「小葉」に枝分かれしています。小葉は乳汁を分泌する小さな「腺房」が集まってできています。各腺葉からは乳管が1本ずつ出ていて、小葉や腺房と連絡し合いながら、最終的に主乳管となって乳頭(乳首)に達します。
乳がんは大きく「非浸潤がん」「浸潤がん」「パジェット病」に分けられます。乳がんは乳腺を構成する乳管や小葉の上皮細胞から発生します。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを「非浸潤がん」、発生部位によっては「非浸潤性乳管がん」、「非浸潤性小葉がん」と呼びます。 乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものは 「浸潤がん」といいます。
乳がん患者の約8割が「浸潤がん」です。「浸潤がん」の中には、「浸潤性乳管がん」と「特殊型」とよばれるものに分類わけされて、「浸潤性乳管がん」の中でもまたさらに「乳頭腺管がん」「充実腺管がん」「硬がん」に分けられます。
乳管がんが乳管の開口している乳頭に達し乳頭部のびらんが発生するものは「パジェット病(Paget病)」といいます。
30-40歳代の女性に多い良性の変化です。主な症状としては、硬結(固くなること)、疼痛(乳房の痛み)、異常乳頭分泌があげられます。
これらの原因は主として卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンというホルモンに関わっており閉経後に卵巣機能が低下するとこれらの症状も自然に消失します。
乳腺症に伴う異常乳頭分泌の性状は、サラッとした水のような漿液性や乳汁様です。この場合は問題ありませんが、血性乳頭分泌がみられた場合には乳がんが隠れている可能性もあるので詳細な検査が必要です。また、月経周期と連動するしこりや痛みはあまり心配する必要はありませんが、月経周期に関係のないしこりに気づいたら医療機関におかかりください。
乳腺炎とは、乳汁のうっ滞(滞ること)や感染により起こる乳房の炎症です。乳腺炎の症状は、赤みや腫れ、痛み、膿、しこりなどです。乳腺炎は、乳がん発症と直接の関係はありません。しかし、痛みがないのに乳房が腫れる場合は、まれに炎症性乳がんの可能性もあるので、症状がつづく場合は、イークや、その他乳腺外科医のいる医療機関におかかりください。
乳腺線維腺腫とは乳房の良性の腫瘍です。10歳代後半から40歳代の人に多くみられます。ころころとしたしこりになり、触ってみるとよく動きます。原則的には特別な治療を必要としません。乳がん発症とも直接の関係はありません。
初期のものは線維腺腫に似ているものの、急速に大きくなるものがあることが特徴です。ほとんどの葉状腫瘍は良性ですが、なかには良性と悪性の中間の境界型や、非常に稀ですが転移を起こしやすい悪性のものもあります。治療の原則は手術による腫瘍の完全切除です。
画像検査(マンモグラフィ、超音波)と組織診の結果が一致した場合に、乳がんの診断が確定します。その後、治療方針が立てられ治療が開始されます。
「穿刺吸引細胞診」といわれる方法で細胞を採取します。検診のときのように超音波(エコー)で乳房のしこりを確認しながら、しこりの位置に注射器の細い針を刺し細胞をとります。一般的な採血時と同じくらい細い針を使用します。採取した細胞は、ガラスの板(スライドガラス)に吹き付けられ染色されます。その後、がん細胞があるかどうかを顕微鏡で見ます。検査結果は、2週間後に郵送か外来(来院)にてお伝えします。検査後に医師より指示します。
(1)良性ではあるもののその成分を調べる必要がある場合、(2)悪性の疑いがある場合、(3)穿刺吸引細胞診の結果で「鑑別が難しい」「検体不適正」「悪性の疑い」など乳がんをはっきり否定できなかった場合には、最終的な診断のためにしこりの組織(細胞のかたまり)をとる「組織診」を行います。
当院では「針生検」という方法で「組織診」行います。超音波でしこりの位置を確認しながら局所麻酔を使用した後、少し太めの針をしこりの部分に刺し、しこりの一部を針でとり出します。検査結果は、2週間後の外来でお伝えします。
検査の種類 | 細胞診 | 組織診 |
---|---|---|
検査でわかること | がん細胞の有無をみます。 偽陰性率は3~4.1%と報告されており、がんかがんではないかをはっきりさせるのに適した検査です。 |
がん細胞の有無をみます。 組織(細胞のかたまり)をとるので情報量が多く、偽陰性率は0~3.6%と報告されています。良性の場合はどういう成分のものか、悪性の場合はどのようなタイプのがんなのかわかります。 |
所要時間 | ご来院からお帰りまでは60~80分かかります。検査の所要時間は10分~15分程度です。 | ご来院からお帰りまでは60~90分かかります。検査の所要時間は30分程度です。 |
検査後の注意点 | 特に日常生活の制限はありません。 | 出血のリスクがあるため、当日は飲酒、激しい運動、入浴を避けて頂きます。翌朝からは通常どおりお過ごし頂けます。 |
※保険診療3割負担の場合の目安です。麻酔の有無などにより変動します。
細胞診ではクラスI~Vまでの結果がでます。 組織診では、良性・悪性・判定不能の結果がでます。もし悪性(乳がん)だった場合にはどのようなタイプのがんなのかを判定し、今後の治療方針を決定するのに役立ちます。
クラスI | 正常な細胞 |
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クラスII | ほぼ正常な細胞 |
クラスIII | どちらとも判定がつかない |
クラスIV | 限りなくがん細胞に近い |
クラスV | ほぼがん細胞 |
※乳がんの「ステージ」とはまったく異なる分類です。
乳がんは正しい診断と、正しい治療の継続で完治をのぞめる病気です。
当院の乳腺外科で確定診断を受けられた方には、受診者様のお住まいの近くの病院や、ご希望の病院にあてた紹介状をご用意します。その後、紹介状をお持ち頂きそれぞれの病院の治療方針に従い治療にのぞんで頂きます。
当院の乳腺外科で確定診断を受けられた方で、かかりつけの病院がない方には、当院の医療連携先である聖路加国際大学病院のブレストセンターを優先して紹介します。
聖路加国際大学病院への紹介時には、イークよりブレストセンターへ直接連絡をとります。ご自身でお問合せ頂くよりもスムーズに、最短の日程で初診のご予約を確保できるようサポートしております。
聖路加国際病院の乳腺外科には多くの連携医療機関がありますが、その中でもイークは、現在最も多くの患者様をご紹介する施設となっております。また、イークでは聖路加国際病院乳腺外科所属の医師、勤務経験をもつ看護師が在籍し、病院への紹介後の流れなどについてもお伝えできます。
乳がんという診断に、ショックで気持ちがふさぐこともあるでしょう。
しかし乳がんは、正しい治療の選択と継続で完治を目指せる病気です。
悲観しすぎず治療に気持ちをむけていきましょう。
分からないこと、不安なことはなんでもご相談ください。
今後のことを一緒に考えていきましょう。
監修:医療法人社団プラタナス イーク丸の内 乳腺外科
参照:乳がん患者ケアガイド, GAKKEN,2006(著:阿部恭子,矢形寛)
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